2025/07/22

「やりたいことは、今やる」—趣味も仕事も全力で
それは2020年。コロナ禍の真っただ中、入社6年目のことでした。アドヴィックスで回生協調ブレーキの信頼性評価を担当するエンジニア・松原泰世さんは、子どもの頃から憧れていたレーサーの夢に、本気で挑むことにします。
「会いたい人に会えない」「行きたい場所に行けない」—コロナ禍の経験を通じて、「やりたいことを先延ばしにしてはいけない」と強く感じた松原さんは、夢に挑戦しようと決意。マツダのロードスターを購入し、市販車で競う「ワンメイクレース※」への参戦をスタートしました。
※マシンの仕様を統一した市販車で競うレース

「初心者」から「勝者」へ
初年度はクラッシュも経験し、悔しい思いをしたものの、2年目には8戦中5勝を挙げるまでに成長。2022年には、「ロードスターパーティレースⅢ・NDクラブマンクラス」で優勝5回、2位2回、4位1回という好成績を収めました。

(右)パーティレース東日本シリーズ第1戦で優勝した松原さん(中央)
2023年には、「富士チャンピオンレース・ロードスターカップ1.5チャレンジクラス」でシリーズチャンピオンを獲得。さらに「ロードスターパーティレースⅢ・NDシリーズクラス」では東日本シリーズ2位となり、着実に実績を積み重ねました。

マツダのチャレンジプログラムで、プロの舞台へ。
松原さんは実績が評価され、マツダ株式会社が運営する、倶楽部MAZDA SPIRIT RACINGチャレンジプログラム 「スーパー耐久レースへの道」の年間ドライバーに2024年から2年連続で選出されています。
倶楽部MAZDA SPIRIT RACINGは、マツダのレーシングチーム「MAZDA SPRIT RACING」の活動を軸に、「共に挑む」のスローガンのもと、モータースポーツをより身近に気軽に楽しんでもらうことを目的に、チャレンジプログラムは活動を通した人材の育成と参加型モータースポーツの裾野を広げ、盛り上げていくことを意義としています。
松原さんは、倶楽部MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER 120号車 ST-5クラスのドライバーとして「ENEOS スーパー耐久シリーズ2025Empowered by BRIDGESTONE(以下、スーパー耐久)」※に参戦中です。
※市販車をベースにした車両で争われる、日本最大級の耐久レースシリーズ。複数のクラスに分かれ、3時間から24時間に及ぶ長時間レースを複数人のドライバーで交代しながら走行するのが特徴。

(右)松原さんが乗車するMAZDA SPIRIT RACING ROADSTER(2025年仕様)
2025年5月30日から6月1日まで富士スピードウェイで開催の「スーパー耐久第3戦 富士 24時間レース」にて、松原さんの所属チームは3位入賞。チームとしても、個人としても、スーパー耐久初の表彰台を獲得しました。

レースで得た力が、開発現場で生きる
松原さんは、電動車に搭載される回生協調ブレーキの信頼性評価の取りまとめを担当。モータースポーツで得た経験が、日々の業務にも確実に活かされていると語ります。モータースポーツは、高度な技術と精神力を要する競技であると同時に、時間やコストの工夫も求められます。限られた条件下で成果を追求するには、効率的かつ戦略的な取り組みが欠かせません。
松原さんは、サーキットでの実走練習に加え、レーシングシミュレーターも活用し、継続的かつ合理的なトレーニングを重ねています。実走でもシミュレーターでも、感覚だけに頼るのではなく、走行データを分析し、自身の課題を明確にしたうえで改善策を立て、それを実践に落とし込む。そうしたサイクルを回しながら、常により高いレベルを目指しています。こうした力は、開発現場でも大きな強みとなり、技術の信頼性向上に貢献しています。

「いってらっしゃい」が力になる――情熱を支える職場の存在
レベルの高いレースに出場する際は、準備のために平日に連休を取ることもあります。松原さんは、自身の不在で業務が滞らないよう、計画的に前倒しで業務を進めます。仕事もモータースポーツも全力で取り組む松原さんの姿に、感化されるメンバーも多いそうです。職場では、松原さんの活動を理解・応援し、業務が円滑に進むように協力体制が整えられています。
レース前の「頑張ってね!」、レース後の「どうだった?」といった会話や、現地での応援、社内報や部内での活動紹介等、日々の温かな支援が松原さんの挑戦を支えています。

(右)レースの応援にきた同僚と記念撮影
技術と情熱が交差する場所で
夢を追いかけることは、時に勇気がいります。でも、あきらめなければ、夢は形を変えて現実になることもあります。松原さんのストーリーは、それを私たちに教えてくれます。アドヴィックスには、挑戦を応援する風土があります。そして、個人の情熱が、組織の技術力を押し上げる。そんな相互作用が、アドヴィックスには確かに息づいています。